映画「キッズ・オールライト」あらすじ(ネタバレ)感想と評価
映画「キッズ・オールライト」
ファミリードラマですが、この映画では両親がレズビアンのカップルという設定です。
そのカップルにはティーンエイジャーの娘と息子がいます。
精子提供によって生まれた子どもたち。
アメリカではこういう家庭も増えてきているのでしょうか。
日本ではまだまだ馴染みがないですが、この映画を観ていると、ゲイのカップルとはいっても、普通の家庭と変わらないのだなあ、と思わされます。
カップルの関係、親子の関係、仲は良いけれどもそれぞれに不満があって、時々衝突が起こる。
そこへ精子提供者である男性が出現したことにより、家族間に不穏な波風が立つという物語です。
映画のあらすじ、感想と評価 *ネタバレ注意
主役のカップルを演じるのは、アネット・ベニングと、ジュリアン・ムーア。
二人ともベテランですが、特にアネット・ベニングさんが良いですね。
彼女が演じるニックは、医師として働いて一家の大黒柱を担ってきました。
悪い人ではないんだけれども、気が強く自分の主張を相手に押し付けてしまうところがあります。
でも実は根は脆いところがあり、そのギャップをチャーミングに演じていました。
一方ジュリアン・ムーアが演じるジュールスは、専業主婦として家庭を守ってきた女性。
家族を大切に思っているけれども、自分を生かす仕事を持っていないというコンプレックスがあります。
二人の母親に育てられた子どもたち・ジョニとレイザーは、今や多感な思春期。
弟のレイザーは自分達の「生物学上の父親」である精子提供者に会ってみたいと思い立ち、姉のジョニに頼み込んで一緒に会いに行くことにします。
その精子提供者のポールを演じるのは、マーク・ラファロ。
この人は、どんな役を演じても存在感のある俳優さんですね~。
まったりとした喋り方が特徴かな(笑)
ポールは気さくで人当たりの良い人物で、たちまち子ども達と打ち解け、さらにはジュールス(ジュリアン・ムーア)とも仲良くなって口説いてしまいます。
それなりに平穏だった家庭に、「異物」である男性・ポールが入り込むことで、バランスが狂い調和が乱れていく。
全くの他人でもない、でも家族でもない、ポールの立ち位置は相当微妙なんですよね。
家族がポールを招いてみんなで食事をするシーンは秀逸。
表面的には楽しそうだけれども、全員が感じている違和感や、ぎこちなさ、気まずさ、そういう雰囲気がとてもうまく表されていました。
いわゆる普通の家庭とは異なる家族の、微妙な距離感が面白い作品。
ただ個人的には、ポールという「侵入者」を完全に排除してしまった終わり方は残念でしたね。
家族として愛を確かめ合ったようだけれど、子どもたちにとっては生物学上の父親なのだし、せっかく出会えたのに、関係を築いていけないのは惜しいと思います。
ジョニを演じたミア・ワシコウスカ、揺れるティーンエイジャーの心情を繊細に表現していてすばらしかったです。
ラストの泣くのをこらえる表情にもらい泣きしそうになってしまいました。
問題を抱えてはいるけれど、深く愛している家族への気持ちが強く伝わってきました。
ゲイの両親に限らず、どんな家族にも問題や波乱はあるもの。
それでもお互いに愛し合っているなら、子ども達は大丈夫だ。
The kids are all right.
タイトルの意味はそういうことなのでしょうか?
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映画「シングルマン」あらすじ(ネタバレ)感想と評価
映画「シングルマン」
あらすじ、感想と評価 *ネタバレ注意
この映画の監督は、トム・フォードという有名なファッション・デザイナーなのだそうです。
さすがにファッション・デザイナーさんだけあって、美的感覚がすぐれているというか、映像の細部の細部にまでとことんこだわりが感じられます。
主人公を演じるのはコリン・ファース。
「英国王のスピーチ」の俳優さんですね。
彼は「英国王のスピーチ」以外では脇役でしか見たことがなくて、いつもあまり目立たない役を演じている印象だったのですが(^^;
この映画で一気にファンになってしまいました。
最愛の恋人を事故で失ってしまった、ゲイの大学教授、という役どころなのですが、その悲しみと絶望、孤独感を押し殺した表情や、厭世的な佇まいには、大人の男性の色気を感じさせられます。
主人公のジョージの住む家がまたシックでおしゃれ。
緑に囲まれた開放的な一軒家なのですが、恋人を失ってしまったジョージには、ただがらんとした寂寥感しか感じることができません。
彼は孤独で空虚な毎日に耐え切れずに、自分の人生に終止符を打とうと決心します。
そして彼の最後となる一日の物語が、繊細で静謐な映像により描かれています。
人生に絶望しているジョージの目には、世界が色彩を欠いたモノクロに見えるのですが、ふとした瞬間に、彼は生き生きとしたカラフルな風景を取り戻すことができます。
例えば、隣の家の少女と話をしたり、花の香りを嗅いだり、心の通じ合う友人と話をしたりするときに。
そういった彼の微妙な気分の変化が、美しい映像によって表現されています。
ジョージの大学の生徒である、ケニー(ニコラス・ホルト)という青年が登場します。
彼がまた美青年なんだなぁ。
ケニーはジョージを尊敬し慕っていて、ジョージの講義を聞いていつもと異なる様子に気がつき、彼のことを心配します。
二人はその夜バーで話をし、親密なひとときを持ちます。
ケニーもまた孤独な心を抱えていて、彼らはお互いの魂の孤独に引き寄せられたように見えました。
彼らが二人で夜の海へ泳ぎに行くシーンはとても美しかったです。
ケニーはジョージの教え子だから、恋愛関係を持つわけにはいかない。
二人は壁に隔てられていて、愛し合いたくてもできないのですね。
そのもどかしさと切なさ…
でもジョージの絶望的だった心はケニーの存在により、一時的にかもしれないけれどほぐれて、安らかになります。
コリン・ファースの心を開いた穏やかな表情に涙が出そうになりました。
彼がそういう時間を持つことが出来てよかった。
「人はみんな孤独だけれど、人生が価値を持つとしたら、他人と真実の交流ができたときにある」
ジョージとケニーのこの会話の言葉が心に残りました。
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映画「ふたりのパラダイス」あらすじ(ネタバレ)感想と評価
映画「ふたりのパラダイス」
この映画、日本では劇場未公開だったようですね。
主演のジェニファー・アニストン、そして相手役のポール・ラッド、この二人はともに有名な海外ドラマ「フレンズ」シリーズのメンバー。
「フレンズ」の大ファンである私には、それだけで嬉しいのです(*^^*)
ジェニファー・アニストンは「フレンズ」のレイチェル役を思い出させるような、キュートで気取りのない、ちょっと天然の主人公を演じています。
彼女はシリアスな作品よりも、やっぱりこういう役が伸び伸びしていて似合う気がします。
ポール・ラッドも好みの俳優さんです。優しそうで、皮肉の効いたユーモアがあって、お茶目なところも。
主演の二人の相性が良く、会話の掛け合いシーンなど見ていて楽しめました☆
映画のあらすじ、感想と評価 *ネタバレ注意
ジョージ(ポール・ラッド)とリンダ(ジェニファー・アニストン)はニューヨーク大好きな都会っ子のカップル。
愛するニューヨークにようやく新居を購入したはいいものの、小さな小さなワンルームのアパート。
しかしその矢先にジョージが仕事をクビになってしまい、彼らはニューヨークを離れなければいけなくなります。
アトランタに住むジョージの兄が仕事を紹介してくれるというので、その家に向かう最中で、二人は何やら怪しげなヒッピー達のコミューンに迷いこみます。
1960年代から時の止まったような彼らの暮らしぶりに、ジョージとリンダは戸惑いますが、彼らから温かいウェルカムを受けて感動した二人は、しばらく滞在してみることにします。
都会っ子の現代のカップルが、60年代のヒッピー・コミューンにタイムスリップしたみたいな物語。
これも異文化体験の一種でしょうか?(^^;
自給自足の生活、全てのものや空間をシェアする、などなどヒッピー達の暮らしは興味深くもありおかしくもある。
何と言ってもコミューンのリーダーであるセス役のジャスティン・セローが弾けていて面白かった☆
かなりいけすかない、時代遅れのヒッピー崩れ野郎を好演しています。(笑)
ジェニファー・アニストンはこの映画が縁で、今のご主人であるジャスティン・セローに巡り会ったらしいですね。
このセスというリーダーがリンダを横取りしようとしたりして、色々とすったもんだがあるのですが、その異文化体験を通してジョージとリンダは夫婦のお互いの絆を見つめ直していくことになります。
30代の、仲良しだけれどちょっと倦怠気味の夫婦関係を描いているので、同年代である私は共感できるし、親しみ深く感じます。
ゆる~く力を抜いて観れて、深く考えずに笑いながら楽しめる映画としておすすめです♪
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映画「砂漠でサーモンフィッシング」あらすじ(ネタバレ)感想と評価
映画「砂漠でサーモンフィッシング」
まずタイトルが不思議で引き寄せられました。
あらすじを読んでみると、
「イエメンに鮭釣りをするために事業を計画する話」
と、何だそれは???という感じで(^^;
特に興味も引かれないし、スルーしてしまおうかと思ったのですが、監督が私の大好きな映画である「ギルバート・グレイプ」の監督、ラッセ・ハルストレムさんではないですか。
とても温かい眼差しを持つ人(と私が勝手に思っている)で、この監督が作った映画なら面白いのかもしれない、と鑑賞してみました。
結果、かなり感動してしまった(笑)
壮大なスケールの夢を叶えるロマンあふれる物語。
さらに味わい深い恋愛映画でもあります。
主演の二人もまたいい雰囲気。
ユアン・マクレガーはいつのまにか中年の男性になっていましたね。
今回は地味でまじめ一辺倒の、冴えない学者を演じていますが、ちょっととぼけた感じが何だかかわいかったです。
エミリー・ブラントは有能で美しいコンサルタント役。
彼女も好きな女優さんです。どの役を演じていても、自然体で、気取りがなく、身のこなしが優雅で素敵です。
映画のあらすじ、感想と評価 *ネタバレ注意
水産学者のフレッド(ユアン・マクレガー)は、ある日投資コンサルタントのハリエット(エミリー・ブラント)から、とんでもない依頼を受けます。
イエメンの大金持ちが、自分の国で釣りをしてみたいという夢を抱き、その実現のための事業に力を貸してくれというのです。
イエメンといえば、慢性的な水不足に悩む砂漠の国。
まず川を造るところから始めなければならないし、もし川を造れたとしても、そんな土地で鮭を放流しても生き残れるわけがないじゃないか…
フレッドはその依頼を断わりますが、イギリス政府が、アラブにおけるイメージ回復のために、その計画を絶好の機会だとして乗り出してきて、フレッドは強制的にその事業の担当者に任命されてしまいます。
しぶしぶその計画に参加したフレッド。
でもその計画を構想したシャイフ(アムール・ワケド)という人物に会って、心ならずも彼の人柄に惹かれてしまいます。
シャイフ役のアムール・ワケドがとても素敵です☆
シャイフは物腰が柔らかく、紳士的でありながら、夢と情熱を秘めた輝く目を持っている好人物。
シャイフはお金持ちの気まぐれで釣りを夢見ているわけでは決してなく、その事業を通じて、自分の国に川を造り、潅漑農業を起こし、土地の民族を団結しようと壮大な目的を持っているのでした。
フレッドとハリエットは、シャイフの人柄に惹かれ、いつしか彼の夢を共有するようになり、その事業に情熱を傾けていきます。
その過程において、いつしか観ているこっちまでワクワクしてきてしまいます^^
たくさんのトラブルがあり、それを力を合わせて乗り越えながら、しだいにフレッドとハリエットの間には恋愛感情が芽生えていく…
フレッドには妻がいて、ハリエットには軍人の恋人がいる。
二人にはそれぞれの過去と悩みがあり、イエメンでの事業は彼らにとって人生のターニング・ポイントとなります。
恋人への思いと、フレッドに引かれる気持ちとの間で揺れ動く、ハリエットの微妙な女心に共感してしまいました。
奥の深い大人のラブ・ストーリーとしても楽しめる、良質な映画だと思います^^
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映画「ONCE ダブリンの街角で」あらすじ(ネタバレ)感想と評価
映画「ONCE ダブリンの街角で」
この映画の主役は音楽そのもの。
でもミュージカルではありません。
ストーリーはあるのですが、登場人物たちには名前も名乗らないし、セリフもとても少ないです。
でも全編に渡って流れる音楽が優しさと温かさ、切なさに満ちていて、何とも言えない余韻を残します。
普段なじみのない、アイルランドのダブリンの街の風景が見れたのも良かったです。
古い建物が保存されていて、派手さはないけれど、素朴な美しさのある街並み。
そこで夢を抱きながら生きている若者たちの生活が描かれます。
あらすじ、感想と評価 *ネタバレ注意
主人公の男は掃除機屋を営む家業を手伝いながら、仕事の終わった後や休日は、街角に立ってギターを弾きながら歌うストリート・ミュージシャン。
彼の歌は味わい深いのですが、何とも哀切。
というのも彼は別れてしまった彼女に未練たっぷりのようで、元彼女への思いのたけを愛憎こめて歌い上げているのです。
その彼の歌に、通りかかった女性が足を止めて聞き入ります。
彼女は彼の歌を気に入った、というか、何かシンパシーを感じて引き寄せられた様子。
彼の歌が終わった後で、二人は話をし、彼女はチェコから移民してきたと言います。
彼女には母と幼い娘がいて、生活のためにメイドや花売りの仕事をして働いているのだそうです。
でも彼女もまた音楽家であり、祖国ではピアノを弾いていたといいます。
そこで二人は近所の楽器店へ行き、彼はギター、彼女はピアノでセッションをします。
このセッション・シーン、静かでロマンティックなメロディを通じて、他人同士の二人の心が合わさり、通じ合っていく様子がとても温かくて良かったです^^
このときから二人は意気投合して、CDを出してプロのミュージシャンになりたいという男の夢のために、彼女が協力することになります。
男の作った曲に、彼女が歌詞を書いたり、仲間達と練習したり…
そのうちに二人の間に恋愛感情が芽生えていくのですが、その様子はとても自然な流れに思えました。
でも彼女はチェコに夫を残してきていて、娘のためにいつかはまた夫とやり直したいと願っているのでした…
二人の恋愛は音楽を通じてのみ、結晶されることになります。
結ばれることのない愛。
でも彼らが二人で協力して作った曲の数々は、美しく豊かでメロディアス。
彼らが二人で一緒に過ごした時間は限れられていましたが、温かな親密さに満ち、夢に溢れた時間だったと思います。
いつまでもその時間と優しい懐かしさを感じさせるような音楽に包まれていたい。
そんな気持ちになってしまう映画でした。
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映画「エターナル・サンシャイン」あらすじ(ネタバレ)感想と評価
映画「エターナル・サンシャイン」
恋人とけんかをしてしまった後や、別れた後などに、「出会わなければ良かった…」などと思った経験はありますか?
この映画はそういう時に「記憶を除去できる」サービスが存在したらどうなるか、ということを描いてしまった物語です。
この設定が面白いなと思いました。
映画のあらすじ、感想と評価 *ネタバレ注意
主人公のジョエルとクレメンタインのカップルはけんかをして、クレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)は怒りのあまり衝動的に彼に関する記憶を除去する手術を受けてしまいます。
それにショックを受けたジョエル(ジム・キャリー)は自分も彼女についての記憶を消してしまおうと、同じ会社に依頼します。
でもその記憶を除去する手術の途中で、クレメンタインとの楽しかった頃の思い出がよみがえってきて、彼は「これ以上記憶を消したくない」という思いに駆られます。
彼は記憶の中で、博士に「記憶を消すのをやめてくれ」と訴えますが、現実のジョエルは眠ったままなので、博士にその声は届きません。
そこで彼は自分の記憶の中を、クレメンタインを連れて逃げ回ることになります。
この記憶から記憶へ逃げ回るシーンが、夢の世界を映像にしたようなシュール・レアリスティックな感じで、面白くもあり、ちょっと怖いような時もありました。
記憶の中での、凍ったチャールズ川の上にクレメンタインとジョエルが寝そべるシーンや美しくロマンティックなこと!
恋人同士として過ごしたかけがえのない時間や、懐かしい思い出が全て消されてしまう過程は残酷で、ひどく切ないものがあります…。
二人は最後に「もう逃げ切れない」と消されてしまうことを受け入れ、「ただこの記憶にいることを楽しもう」と言います。
その雪が降る浜辺のシーンが幻想的で素敵でした。
全てを忘れてしまった元恋人同士の二人が、新たに出会いを果たしたとき、どうするのか…。
ラストの二人の笑顔には救われたような気持ちになりました。
失われてしまった記憶の分も、二人にはまた新たに想い出をたくさん作っていってほしいな。
ジム・キャリーが真面目で実直、ちょっと退屈な青年を演じていて、いつものコメディアンの雰囲気とは違うので意外だったのですが、しっくり似合っていました。
ケイト・ウィンスレットも衝動的で破天荒な女性を好演していました。
うまくいかなくなることを恐れずに恋がしたくなるような映画でした^^
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