映画「シングルマン」あらすじ(ネタバレ)感想と評価
映画「シングルマン」
あらすじ、感想と評価 *ネタバレ注意
この映画の監督は、トム・フォードという有名なファッション・デザイナーなのだそうです。
さすがにファッション・デザイナーさんだけあって、美的感覚がすぐれているというか、映像の細部の細部にまでとことんこだわりが感じられます。
主人公を演じるのはコリン・ファース。
「英国王のスピーチ」の俳優さんですね。
彼は「英国王のスピーチ」以外では脇役でしか見たことがなくて、いつもあまり目立たない役を演じている印象だったのですが(^^;
この映画で一気にファンになってしまいました。
最愛の恋人を事故で失ってしまった、ゲイの大学教授、という役どころなのですが、その悲しみと絶望、孤独感を押し殺した表情や、厭世的な佇まいには、大人の男性の色気を感じさせられます。
主人公のジョージの住む家がまたシックでおしゃれ。
緑に囲まれた開放的な一軒家なのですが、恋人を失ってしまったジョージには、ただがらんとした寂寥感しか感じることができません。
彼は孤独で空虚な毎日に耐え切れずに、自分の人生に終止符を打とうと決心します。
そして彼の最後となる一日の物語が、繊細で静謐な映像により描かれています。
人生に絶望しているジョージの目には、世界が色彩を欠いたモノクロに見えるのですが、ふとした瞬間に、彼は生き生きとしたカラフルな風景を取り戻すことができます。
例えば、隣の家の少女と話をしたり、花の香りを嗅いだり、心の通じ合う友人と話をしたりするときに。
そういった彼の微妙な気分の変化が、美しい映像によって表現されています。
ジョージの大学の生徒である、ケニー(ニコラス・ホルト)という青年が登場します。
彼がまた美青年なんだなぁ。
ケニーはジョージを尊敬し慕っていて、ジョージの講義を聞いていつもと異なる様子に気がつき、彼のことを心配します。
二人はその夜バーで話をし、親密なひとときを持ちます。
ケニーもまた孤独な心を抱えていて、彼らはお互いの魂の孤独に引き寄せられたように見えました。
彼らが二人で夜の海へ泳ぎに行くシーンはとても美しかったです。
ケニーはジョージの教え子だから、恋愛関係を持つわけにはいかない。
二人は壁に隔てられていて、愛し合いたくてもできないのですね。
そのもどかしさと切なさ…
でもジョージの絶望的だった心はケニーの存在により、一時的にかもしれないけれどほぐれて、安らかになります。
コリン・ファースの心を開いた穏やかな表情に涙が出そうになりました。
彼がそういう時間を持つことが出来てよかった。
「人はみんな孤独だけれど、人生が価値を持つとしたら、他人と真実の交流ができたときにある」
ジョージとケニーのこの会話の言葉が心に残りました。
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