映画「ロルナの祈り」あらすじ(ネタバレ)感想と評価
映画「ロルナの祈り」
監督はベルギーのダルデンヌ兄弟。
「息子のまなざし」や「ある子供」の監督なのですが、人の心理を丁寧かつ冷静に見据えた作品には、いつも感心させられます。
あらすじ、感想と評価 *ネタバレ注意
この映画の主人公・ロルナは、アルバニアからベルギーに移住してきた女性。
彼女はベルギー国籍を取得するために、闇ブローカーの斡旋で、ベルギー人と偽装結婚をすることになります。
相手の青年、クローディは麻薬中毒患者。
彼は麻薬を買うお金欲しさに偽装結婚に同意をしたようです。
私はこういった問題には無知なのですが、偽装結婚の審査は結構厳しいようですね。
偽装結婚とバレないように、しばらくの間は一緒に生活をしなければいけないみたいです。
そこでロルナはクローディと一緒に暮らします。
初めは麻薬中毒者の彼のことを疎ましく思っていた彼女。
ロルナとクローディ、二人を演じる俳優さんたちの演技が自然で、彼らの暮らしぶりからもリアルな生活感が伝わってきます。
その生活感は、冷たく乾いていて、殺伐とした印象です。
それはそのままロルナの心の状態を表しているのかもしれません。
異国の地で、心を閉ざした生活を送っているのですね。
闇ブローカーの計画としては、ロルナが国籍を取得したら、クローディは用済みなので「始末」してしまうというものでした。
ロルナはそれを承知で、クローディに対して頑なに冷たく接していたのですが、徐々に彼に心を開いていきます。
クローディは一緒に暮らすうちに、自然に彼女を慕い始め、麻薬をやめる努力をします。
そのうちにロルナはクローディに愛情に似たものを感じ始めます…
彼女が自転車に乗るクローディに駆け寄り、優しく微笑みを見せるシーンは、とても無邪気で幸福そうで、観ているこちらの心も温まりました。
ロルナはクローディを麻薬中毒から救いたいと本気で願うようになり、彼を更生させるべく手助けをします。
そしてその過程で二人は結ばれます。
ロルナは何とかクローディを殺さずに助けたいと思い、闇ブローカーのファビオに交渉します。
しかし彼女の努力にも関らず、クローディは抹殺されてしまう…
悲しく残酷な物語なのですが、この映画の真骨頂はここから。
救えなかった男性に対する罪悪感と贖罪の意識からなのか、ロルナの心と身体に変化が起こります。
彼女の中である命が息づくことになる。
彼女はその命を守ろうと、ファビオたちの手から逃れて、森の中に逃げ込みます。
そしてその命に向かって静かに語りかけます。
静かな森の中でのラストのモノローグは、ロルナの祈りのようでもあり、神々しささえ感じられます。
死んでしまった愛、救えなかった命への想い。
犯してしまった罪を購うこと。
ロルナという女性の変化を通して、言葉では説明できない、人間の心理の複雑さを、詩的に美しく表現した映画だと思います。
静かな森の映像とともに、心に強く響いてくる物語でした。
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