映画「愛を読むひと」あらすじ(ネタバレ)感想と評価
映画「愛を読むひと」
なんとも重厚なストーリーでした。
いまだ余韻が冷めきっていません…
第二次世界大戦後のドイツを舞台に、15歳の少年が、彼の運命を変えることになる年上の女性と出会う物語です。
最初の出会いから、数十年にわたる二人の運命をたどっていきます。
ずっと年上の女性との、生涯を通じる愛の物語。
二人の愛のかたちは、「本を読み聞かせること」
その寄り添い方、心の交流が、優しく、愛おしく、そして切ない。
本を朗読することが終わってしまうとともに、二人の愛の物語も終わってしまうことになります。
重みを感じさせる時の流れと、現在と過去の交錯する映像は圧巻です。
「めぐりあう時間たち」のスティーブン・ダルドリーが監督なのだそうで、なるほど~、と思いました。
確かに壮大な時の流れを感じさせる作り方が似ているかもしれません。
主演はケイト・ウィンスレットとレイフ・ファインズ。
ケイト・ウィンスレットは安定した存在感のある女優さんですね。
ドイツ人の役を演じているのですが、それほど違和感がなく、強さと弱さを併せ持つ主人公のハンナという女性を繊細な演技で表現していました。
レイフ・ファインズはいつもながらの静かに役に入り込む演技でさすが。
この人は本当に女優を立てるのがうまい役者さんだなあと思います。
でもできればこの重厚な映画はドイツ人の俳優を使って、ドイツ語で作ってほしかったかな。
その方がドイツの街並みや風景ともしっくり似合ったと思います。
あらすじ、感想と評価 *ネタバレ注意
15歳のマイケルはある日、通学途中に気分が悪くなったところを、通りすがりの女性に助けられます。
病気の治った彼は、お礼をしようと彼女の家まで訪ねにいきます。
そのハンナという30代の女性は、路面電車の車掌として働き、素朴で簡素な部屋に住んでいます。
寡黙でミステリアスな雰囲気のある彼女に、マイケルは強く惹かれ、彼女に誘われるままに肉体関係を持ちます。
マイケルは初めての恋愛に夢中になり、毎日のように学校帰りにハンナの部屋を訪ねるようになります。
ハンナは彼に本を読んで欲しいと頼み、マイケルは情事の度に彼女に本を読み聞かせることが日課となります。
ハンナはずっと年下であるマイケルとの情事に引け目を感じていたのか、彼と距離を置こうとします。
そしてある日何も言わずに彼の前から姿を消してしまいます。
それから8年が過ぎ、法学生となったマイケル。
ゼミの課外授業で裁判所を訪れた彼は、そこでハンナと思いがけず再会します。
彼女はナチス政権時代に看守として働いていて、殺人罪で被告席に座っていたのでした…
かつて愛した人、そしておそらく今でも忘れられず愛しているであろう人が、厳しく罪を糾弾されるのを見守る苦しさ。
そしてその罪はマイケル自身にとっても到底赦しがたいものでした。
彼女の罪を赦すことはできなくても、牢獄にいる彼女に寄り添うことができることに、彼は気がつきます。
かつて二人が幸せだった頃のように、「本を朗読すること」によって…
マイケルの朗読によってハンナの監房での生活に光が照らされるのですね。
彼のテープを受け取ったときの、ケイト・ウィンスレットの嬉しそうな表情が心に残っています。
愛ってこういうかたちもあるのだなと思いました。
深く愛していても、相手の犯した罪をどうしても赦すことのできないマイケルの苦悩も胸に響きました。
罪の赦しと、生涯にわたる愛。
美しく繊細な映像、緻密につくりこまれた構成により、心に染み入る作品に仕上がっています。
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